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16話 怒りと涙、そして温かい食卓

Penulis: みみっく
last update Terakhir Diperbarui: 2025-08-03 07:00:02

 熱いものは熱いまま、冷たいものは冷たいまま。 肉や野菜も傷まず新鮮なまま保てる――まさに万能の保管庫だ。

「ついでに、ちゃんと冷やす機能も欲しいよな……」

 すぐ隣に、同じような木箱をもう一つ用意。 魔石に〈フロスト〉の魔法を付与して、“冷蔵庫”としての機能を持たせた。

 これで保存環境は格段に向上した。 暑い日の冷たい飲み物から、作り置きのスープまで―― どれも快適に保管できる。

「んふふ……快適生活ができるな。アリア、驚くだろうな……?」

 アリアの驚いた顔を想像すると、自然と笑みがこぼれる。 ふたりの暮らしが、またひとつ豊かになっていく。

「……でも、だいぶやり過ぎた感があるな。まっいっか、アリアと暮らすだけの家だしな。他の奴は、ここには入ってこれないんだし……」

 前世での暮らしにはまだ遠いかもしれない。 けれど――この異世界で、ここまで快適な生活環境を整えられたことは、 確かな誇りでもあった。

 ♢ミーシャとの共同生活

 アリアが作ってくれた料理を、異空間収納から取り出し、盛りつけていたときだった。 ――外で、「ガタッ」と何かが揺れる音がした。

 不審に思って扉を開けると、そこには銀髪のネコ耳を持つ少女がいた。 玄関近くの壁にもたれかかり、座ったままウトウトしていたらしい。

 こちらに気づくと、少女は一瞬気まずそうな表情を浮かべ、それをすぐにムスッとした顔に切り替えた。

「そんなところにいないで、家に入るか?」

 ユウヤが優しく声をかけると、少女はプイッとそっぽを向いた。

「ふんっ」

 でも完全に拒絶しているわけじゃない。 時おりチラッチラッと俺の様子をうかがっているし、昼間のように逃げる素振りもない。 ……ってことは、誘ってほしいってことか?

 ユウヤは、その不器用な態度からそう察した。

「はぁ……。良かったら、入れよ」

 少しだけ呆れたように言うと、少女は不満げな顔でぼそりと返した。

「……仕方ないわね。入ればいいんでしょ」

 そう言いつつも、素直に家の中に入ってくる。 キョロキョロと部屋の中を見渡しながら、足取りは軽く、どこか嬉しそうだ。

 ……が、キッチンに目を向けた瞬間、声を上げた。

「わっ……な、何してるのよこれっ!?」

 少女は、ユウヤが改造したキッチンを見て、驚きと怒りが入り混じったような声を上げた。 その瞳は、まるで信じられないものを見たかのように、驚きで大きく見開かれていた。

「あ〜。それ、キッチンを使いやすくしたんだけど?」

 ユウヤが説明すると、少女は一瞬きょとんとしたあと―― みるみるうちに目が潤み、今にも泣き出しそうな顔になった。

「はぁ? わたしの……思い出のキッチンだったのにぃ〜……もぉ、ばかぁ……」

 その言葉に、ユウヤはハッとした。

「……悪い。やっぱり、ここ……お前の家だったのか?」

 家具が揃っていたこと。 この家が森の一番近くにあったこと。 壁には、どこか無理やり補修された跡。 ――魔獣に襲われるとすれば、たしかにここしかない。

 ユウヤは少女の言葉と状況から、ようやく確信した。 この家は、彼女が住んでいた家だったのだ。

「そうよっ! わたしの家だったのっ! だから、元に戻しなさいよっ!」

 銀髪のネコ耳の少女が、ポロポロと涙をこぼしながら訴えてくる。 その姿は、怒っているというより―― 大切なものを壊された、悲しみのほうが大きく見えた。

 ……でも、悪いけど、戻すつもりはなかった。 すでに所有権は俺にあるし、この拠点は必要だった。 ユウヤは、少女の気持ちを理解しつつも、静かに自分の立場を選んだ。

「……お前、腹減ってないか?」

 少し間をおいて、話題を変える。 少女はムスッとしたまま、腕を組んで……でも、お腹をさすりながらボソッと答えた。

「ううぅ……ぐすん。お腹、減ってない……っ」

「そっか。俺は夕飯まだなんだよな〜。……一緒に食ってくれるか?」

 そしてユウヤは、あえて強めに言ってみせた。

「――あ、一緒に食べるぞ。ほら、食えってー」

 言葉とは裏腹に、少女のお腹は小さく「ぐぅ〜」と鳴っていた。 それでも彼女は視線を逸らしながら、テーブルに並べられたアリアの料理を何度もチラチラと見つめている。

 ……素直になれない。けど、本当はちょっと嬉しそう。

 ユウヤは、その気持ちに気づいていた。だからこそ、 この“半ば強引な誘い”が、きっとちょうどいい距離感だと思えた。

「……うん。わかった。一緒に食べれば良いんでしょ!」

 散々、文句を言ってスッキリしたらしく、少しは素直になった。少女は、ユウヤの言葉に渋々といった様子で頷き、テーブルについた。

「わぁ~!美味しい……これっ!」

 一口食べると、少女の顔は一気に輝いた。その瞳は、料理への驚きと喜びでいっぱいに見開かれている。

「な。美味いな~」

 ユウヤも、アリアの料理の腕前を改めて賞賛した。

「うん♪美味しい~」

 少女は、ご機嫌そうに料理を食べ始めた。頬をほころばせ、ひと口ごとに小さな幸せを噛みしめているようだった。その様子を見て、ユウヤはふと、彼女のことをもっと知りたいと思った。悪い子には見えないし、もし困っているのなら、力になってやりたい。

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